研究概要 |
雲仙火山におけるマグマ活動をいっそう詳しく調べるために,発達を続ける溶岩ドームの近距離に傾斜計観測点を増やし,その実態の解明に努めた.雲仙火山では,これまで続いてきた周期1〜2時間の超長周期の山体振動は比較的低調であったが,1994年10月から1995年2月にかけて周期30〜100時間の異常な山体振動が発生し,本研究によってその経過が詳しくとらえられた. 振動の周期はごく初期には約30時間で,安定して観測を続けているFGA観測点での両振幅は約1マイクロラジアン程度であった.その後,周期は徐々に40時間前後に延び,振幅も増大して,10月末〜11月初めには数マイクロラジアンの両振幅を示した.このあと,振動の卓越周期は11月末から約60時間,12月下旬から約70時間,1月中旬から約90時間,1月下旬からは約100時間に変化した.一方このような周期的な変動に呼応して,地震発生や溶岩崩落が周期を合わせて繰り返された. 傾斜計によって観測された今回の山体振動は,火口からの距離が大きくなると急速にその動きの振幅が小さくなることから,火道の最上部付近に振動源があるものと推定された.また,一連の現象は,次のように考えられる.(1)火道最上部付近で,マグマの供給や火山ガスの発生のために圧力が高まる.(2)圧力の増加のため,隣接部で小さな地震が多発する.(3)圧力が限界に達し,栓になっている岩を押し上げる.(4)これによって圧力が緩和され,地震発生が減る.(5)さらに圧力が下がると,やがて栓になっている岩の隆起が停止ないし停滞.(6)マグマの供給や火山ガスの発生が定常的に近い形で続く限り,ふたたび(1)にもどって繰り返す.その供給の速度と“栓"の動き始めや停止の圧力の均衡によって,それぞれの時期ごとに繰り返しの周期が半ば安定的に生じて現在にいたる.
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