結晶の数密度は、核形成速度の時間変化によって決定される。その核形成速度は、結晶化成分の濃度と温度の関数である過飽和度によって決まる。ここで重要なことは、濃度と温度は、核形成した結晶の成長によって決まってくることだ。すなわち、結晶成長の進行は、メルト中の濃度を減少させ、潜熱の解放によって温度を上昇させる。このことは、核形成の進行中にも作用し、過飽和度と核形成速度の時間変化を支配する。この成長と核形成の関係について、定量的に考察した結果、結晶数密度と成長則との間の定量的関係を得た。例えば、今仮に、成長則が時間のp乗に比例すると仮定しよう。ここで、指数pは成長の機構によって決まり、例えば、p=1/2なら拡散成長になる。このとき、結晶数密度は冷却速度の3p乗に比例することになる。また、完全に固結した岩石中で観察せれる結晶の平均粒径は、冷却速度の-p乗に比例する。岩脈やシルなどのように熱伝導で冷却が進行する場合には、冷却速度は、母岩との接触面からの距離の-2乗に比例して小さくなるので、結晶数密度は距離の-6p乗に比例して、また平均粒径は距離の2p乗に比例して変化する。このことを利用して、逆に、天然での結晶数密度の距離依存性から、成長側の指数pの値を求め、天然での結晶成長の機構について情報を得ることができる。Gray(1978)が岩脈について行った結晶数密度の測定結果によると、単斜輝石や酸化物はp=1/2となり拡散成長に従うように見える。一方、斜長石はp=1/6となり拡散成長以外の何か他の機構で成長するように見える。この様な、斜長石と他の鉱物の成長則の違いは、距離とともに、岩石の組織がintergranularからophiticさらにはpoikiliticへと遷移する原因と考えられる。
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