研究概要 |
マグマの起源や分化を議論するとき同位体組成は重要なパラメータのひとつである。マグマ系における融解や結晶作用は高温でおこるので、固-液平衡に起因する同位体質量分別はほとんどおこらない。一方、マグマ中を同位体をもつ元素が拡散するときには、拡散種の質量,m:,によって拡散係数,D:,が異なるので、同位体質量分別がおこることが基体される。我々は、最近MCシミュレーションによりMgOメルト中でのMg,Oの自己拡散係数の同位体効果に関して、おおよそD∝m^<-0.1>の関係があることを示した。これは分子運動論から期待される関係(D∝m^<-0.5>)と比べて、質量依存性がかなり小さい。本研究では、このD-mの関係が、珪酸塩メルトでも成り立つのかどうかを明かにするため、珪酸塩メルトでのMDシミュレーションおよび室内実験による研究をおこなった。 MDシミュレーションは、MgOおよびMgSiO_3メルトについてCaO-MgO-Al_2O_3-SiO_2系のポテンシャルパラメータを用いておこなった(N=1200,T=4000K,p=1 bar)。Oの自己拡散係数の質量依存性は、MgOに比べてMgSiO_3メルトの方が小さいことがわかった(MgO;D∝m^<-0.092±0.014>、MgSiO_3;D∝m^<-0.061±0.013>)。これはMgSiO_3メルトの方がMgOに比べてよりpolymerizeされているためと考えられる。 一方、Si-Geを相互拡散させた実験の試料(NaAlSi_2O_6-NaAlGe_2O_6系,T=1400℃,p=9.5kb,t=4hrs)について、二次質量分析装置(SIMS)を用いてin-situでSiの同位体比(^<30>Si/^<28>Si)変化を測定した。Siの拡散距離に応じて100‰を越える大きな同位体質量分別が認められた。もしこの結果が正しいとすると、D∝m^<-0.5>程度の大きな質量依存性が期待される。これはMDシミュレーションの結果と一致せず、今後の課題である。
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