研究概要 |
この研究では,特に,雲仙岳,ピナツボ火山,鬼界アカホヤ火山灰について,その噴出物の岩石組織および鉱物・ガラスの化学組成の測定をおこない,マグマ供給系および噴火過程の解析を行った。雲仙岳については,斑晶斜長石の累帯構造について,最外部でのみCa-Naの変動がMg,Feの変動を伴うことから,噴火直前にマグマ混合が生じたことが示された.このことをより定量的に確認するために,東工大の急速冷却装置付HIPを用い,斜長石-マグマ間のMg,Feの元素分配に関する予備的な実験をおこない,水を含む系でも,Feの元素分配に酸素フュガシテイが強く影響することを確認した.なお,この実験の試料カプセル封入溶接装置を広島大学に設置した.一方,雲仙岳1991年の噴出物の含水量,水素同位体組成から,マグマの脱ガス過程についての新知見が得られた.つまり,火山弾の急冷縁は徐冷した内部と比較すると,高い含水量,水素同位体比を有しており,これまで知られている平衡同位体分別とは異なり,恐らく,急速な発泡による元素拡散により生じる非平衡同位体分別が生じたと考えられる.ピナツボ火山1991年噴出物の斑晶斜長石についても同様な検討をおこなった結果,デイサイトについては,マグマ混合の証拠はなく,安山岩ドームについて,マグマ混合の証拠が見い出された.雲仙岳とピナツボ火山では共に高温マグマと低温マグマの相互作用が生じているが,異なった噴火過程(主に上昇時間の差異)により,マグマ混合の様式が異なったものと考えられた.鬼界アカホヤ火山灰は6300年前の大規模爆発で生じたものであるが,今回,硫黄島で採取した試料について,ガラス組成の検討をおこなった結果,初期の降下軽石はSiO2=72-76wt.%であるが,後期の火砕流堆積物ではSiO2=66-76wt%の広い組成を示し,この噴火が組成的に不均質なマグマ溜まりに由来することが明らかになった.
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