1〜14GPaの圧力において、カンラン石と珪酸塩メルト間の12元素の分配係数の測定を行った。本研究では、高圧高温下で試料を30分から2時間保持した後、急冷して減圧し、試料を取り出した。回収した試料はEPMAを用いて元素分析を行い、分配係数を求めた。回収された試料中では珪酸塩メルトは針状結晶の集合体となっているため、珪酸塩メルトの組成を正確に求めるためには数多くの点で元素分析を行い、その結果を二次元的に解析することが望ましい。本研究では、この時点でもっとも高速かつ安定に動作すると考えられるパソコンを補助金により購入し、各試料ごとに100〜200点の測定を行い、これを解析することにより分配係数を求めた。 測定の結果、ほとんどの元素において僅かではあるが、明らかに圧力の上昇とともに分配係数が減少することが認められた。しかし、A1だけは圧力の上昇とともに分配係数が上昇する事が観測された。圧力の上昇に伴って、カンラン石と共存する珪酸塩メルトの組成は徐々に変化し、よりSiO_2成分に乏しくなる。そこで、A1の分配係数に対する珪酸塩メルト中のSiO_2量との関連を調べたところ、珪酸塩メルト中のSiO_2と他のイオン量の比が減少するにつれて、A1の分配係数が上昇することが明らかになった。このため、A1の分配係数だけが圧力の上昇とともに増加する現象は、圧力の上昇に伴う珪酸塩メルトの組成変化が原因ではないかと考えられる。この現象は珪酸塩メルト中の構造が、SiO_2量と共に変化し、Si^<4+>とA1^<3+>の交換反応に影響を及ぼしている可能性を示唆している。
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