研究協力者の巽好幸及び中国側研究者からの年代測定試料が二月末現在で届かなかったために既存の質量分析計を使った具体的な年代データは得られていない。一方、試料が届く前に当方で準備する必要があった感度法によるアルゴン測定用トリプルコレクター質量分析計(新しく開発したもの)の整備はそのイオン銃に欠陥があることが分かり、設計のやり直しを行った。このように、研究課題にある中国東部玄武岩の年代学は全く進歩がなかった。しかし、それを行うための基礎実験は成功し多くの成果があった。 若い火山岩の場合のK-Ar年代測定においてアルゴンの定量分析は感度法により、特に我々が現在開発中のトリプルコレクター質量分析計を用いて行う必要がある。感度法による高精度な年代測定ができるように新型質量分析計のコンピュータによる児童制御を行った。また火山岩中の同位体比不均質性の検討には単結晶によるレーザー段階加熱によるアルゴン分析技術が必要である。そのための技術を開発した。活性ガスによるガス抽出装置への被害を抑さえるための特殊な装置の開発も行った。これらの成果は公表されつつある(裏面参照)。 中国東部の火山活動の歴史は日本島における火山活動史と比較する必要がある。それは、二千万年に遡って日本島はユーラシア大陸の東縁であったからである。西南日本の白亜紀以降の火山岩類の年代を整理してそれを公表した。また、実際に日本海の拡大前後の火山活動史を正確に求めるために西南日本における中新世火山岩類の年代測定を行った。それによって、拡大速度が従来推定されていたより格段に速いことがわかった。
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