研究概要 |
本研究ではフラーレン類の高度に共没しかつ歪んだπ結合の特異な反応性に注目し,フラーレン炭素との選択的な結合生成反応を基盤とする種々のフラーレン誘導体合成法の開発と共に,新しい物性や機能を持つフラーレン誘導体の設計と合成を目的として検討を行った.以下にその概要を記す. ジメチレンケテンアセタールによるC _<60>修飾法の開発 我々は歪みのために反応性が高いジメチレンケテンアセタールを用いたC_<60>の化学変換を開発した.すなわち,これはC_<60>と[2+2]付加環化が室温で進行し四員環骨格を持つC_<60>誘導体が高収率で得られた.さらに,付加環化体の反応性について検討を行ったところ,酸性条件下ではC_<60>炭素と結合した一つの炭素一炭素結合の加水分解という興味深い反応を見いだした. 2.フラーレンを持つ新しい金属配位子の合成 有機リン化合物が金属の配位子として有機金属錯体触媒反応において重要な役割を果たしている点に着目し,C_<60>を置換基として持つリン誘導体とその金属錯体の合成を行った.すなわち,リンアニオンを用いたフラーレンの官能基化に着目し,二級フォスフィン-ボラン錯体アニオンのC_<60>に対する付加に続く脱ホウ素化により対応するリン化合物を合成した.さらにこれははPtCl_2と2:1の量論比で対応する金属錯体を生成すると共に,反応触媒とも成り得る事を明らかにした. 3.フラーレンカルボン酸の薄膜化 我々がすでに合成を報告しているフラーレンカルボン酸は典型的な両親媒性分子であることからLB膜の形成が期待される.そこで,これを水面上に展開したところ単分子膜を形成することがわかった.崩壊圧がかなり高いことから,安定な膜であることが示唆された.さらに,水面上に生成した膜を水平付着法あるいは垂直浸漬法により様々な基盤上に累積することにより,X型累積膜が生成することがわかった.
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