平成6年度は以下の研究実績を得た。 1.カーボンチューブの軸に垂直方向に磁場をかけた場合に、エネルギーバンドに2種類の振動の構造があることがわかった。このうち磁場の関数として小さな振動は波数空間でエネルギーバンドがずれる効果によるもので、金属・半導体転移をひきおこすことがわかった。また大きな振動は、エネルギーバンド巾を変更させるもので、これはカーボンチューブの螺旋構造と密接な関係があることがわかった。 2.C_<60>固体中では261Kの温度で、固体中で分子の回転に起因した相転移現象がおこる。また、87Kでは分子回転が完全に凍結しガラス転移が起きることが知られている。この87Kでの転移とX線によって観測された2a_0の超周期構造を説明するために、モデルポテンシャルを用いて計算を行ない、準安定な構造において、2a_0の超周期構造がa_0の周期構造より安定であることを見い出した。 3.C_<60>にLi原子を付加していった場合の安定構造及び電子状態を半経験的分子軌道計算法を用いて計算した。この結果、Li原子はC_<60>表面上でお互いに接近しているほうが安定であること、またLiからC_<60>への電荷の移動量は3以上は移動しないことがわかった。 4.C_<60>の生成初期構造である、環状及び鎖状構造の炭素クラスターの構造最適化と振動構造を半経験的分子軌道計算法を用いて計算した。この結果炭素数が24ぐらいで環状構造において1重3重結合から2重結合に変化することがわかった。また炭素数が16ぐらいで、最低の振動モードが0cm^<-1>に近付き、非常に軟らかな構造になることがわかった。 本研究に関連して、カーボンチューブの総合解説(Review article)をDresselhaus教授と共同で発表した。
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