研究概要 |
触媒的不斉反応の分野で、不斉マイケル付加反応の開発はいまだ未解決の課題である。特に,多くの種類の不斉炭素を簡便に構築できるプロキラルなマイケルアクセプターの反応には,あまり成功例がない.本研究では,アミノ酸金属塩を用いるカルボニルの新しい触媒的活性化法を用いて,プロキラルアクセプターへのマロン酸エステルやニトロアルカンの不斉マイケル付加を検討している.本年度は,触媒の構造と基質の構造が不斉誘起に与える効果を調べ,マロン酸エステルの反応で高い不斉誘起に成功した. L-プロリンのアルカリ,アルカリ土類.ランタノイド金属塩とテトラアルキルアンモニウム塩を合成して,マロン酸エステルと2-シクロヘプテノンの反応で,触媒活性を調べた.金属塩ではルビジウム,セシウム塩が良い結果を与えた.一方,アンモニウム塩では,アルキル基を大きくすると,生成物の絶対配置が,(R)-体から(S)-体へと変化することがわかった.このことは,本反応では二種類以上のメカニズムが競争的に作用していることを示している.また,光学活性アルキル基を有するアンモニウム塩では,キラリティーの効果は見られなかった.アミノ酸骨格の効果も詳細に調べたが,現在のところ,プロリンがもっとも良い結果を与えている. ところで,マロン酸t-ブチルエステルは高い不斉誘起を示すが,収率的に満足すべき結果を与えていなかった.そこで,種々の添加物を検討した結果,フッ化セシウムが,不斉収率を損なうことなく,反応を促進することがわかった.L-ブロリンルビジウム塩(20mol%)とフッ化セシウム(20mol%)存在下で,収率良くマイケル付加反応が進行し,鎖状(E)-エノンでは80%ee以上の高い不斉収率を達成した.
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