研究概要 |
α鎖に不飽和結合、特にアレニル結合を有するイソカルバサイクリン誘導体の不斉合成を指向し、プロキラルな共役イナ-ルを親エン体とする新規カルボニールエン反応の不斉触媒化を検討した。ω側鎖をもつ光学的に純粋なエン基質と1位(prostaglandinnumbering)のエステル官能基を有する共役イナ-ルとの不斉触媒的エン反応を行った結果、この共役イナ-ルは高いエン反応性を有し、対応するエン生成物を高収率で与えた。しかも、99%とほぼ完璧な6,9α-位置選択性、さらには96%という高い4R選択性が見られた。得られたエン生成物は4位に水酸基を有し、共役するアセチレン構造を有する新規なイソカルバサイクリン誘導体となり、それ自体の生理活性にも興味がもたれるが、さらに以下に述べる方法により望むアレニル側鎖へと変換した。すなわち、エン生成物のアルコールを、リン酸エステル変換し、以下に述べるPd(O)触媒、SmI2、t-BuOH還元反応により望むアレニル側鎖に高収率で変換した。さらにMg/MeOHでアレンの還元反応を試みたところ、β,γ・不飽和側鎖が選択性に得られた。現在さらに、アレンより通常のイソカルバサイクリン側鎖、またα,β-不飽和側鎖への直接的な変換についても検討中である。 九州大学、稲永らによって報告されていたアレニル、プロパルギルパラジウム中間体を経るヨウ化サマリウム(II)還元反応において、従来基質として用いられていた酢酸エステルに代わって、リン酸エステルを用いることにより、アレン型生成物が圧倒的に高い位置選択性で得られることを見に出した。また、1級のリン酸エステルを用いる場合には、今度は逆にアセチレン生成物が高位置選択的に得られることも明らかにした。 一方、ノンプロキラルなアルデヒドであるホルムアルデヒドを親エン体とするホルムアルデヒド-エン反応の不斉触媒化を行い、(3-オキサ)イソカルバサイクリンの不斉合成も報告した。
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