研究概要 |
1.CFPA類縁体の合成:ベンゼン環のパラ位に電子求引性基(X=NO_2,Br,CN)が導入されると脱炭酸が起き易いことが分かったので,次に電子供与性基を持つ化合物に主眼を置いて1a-eを選択し,入手が容易な2a-eおよび3a-eを出発原料とする,それぞれ求核的または求電子的フッ素化反応を施す合成経路を検討した.その結果,条件検討の余地があるものの,目的の1a-eが得られた.これらを,異性体識別精度を知るための指標となる三種のジアステレオマ-5a-e〜7a-eへと変換し,それらの^1H-NMRおよび^<19>F-NMRから得たΔδ値の比較から,1a-eはその精度においてMTPAを遙かに凌ぐのみならず,CFPAと同程度に有望であることが分かった.そこでこれらの光学活性体の簡便は入手法を検討した. 2.不斉フッ素化試薬の開発:精密化学的に分子設計した化合物8に焦点を絞り,サッカリンを原料とする8の簡易合成と,カンファースルホンイミド体経由による光学分割を達成した.予試験として8による9の不斉フッ素化を試みたところ,10が74%eeで得られた.したがって,この試薬を用いる不斉フッ素化反応を適用すれば,1a-eの光学活性体が容易に得られることとなる. 3.生物化学的手段による分割:実用性の観点から,酵素を用いる1a-eの光学活性体合成を試みた.メチルエステル体4a-eのリパーゼM10等の酵素による不斉加水分解を試みたところ,約80%eeの4a-eが得られた.したがって,この方法を改良すれば,目的物の光学活性体を得る実用的な方法となり得る. 4.絶対構造決定法:CFPA類縁体合成を優先して行ってきため,本課題に関しては現在継続中である.
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