研究概要 |
キラルなカチオン反応種を利用する不斉反応の開発研究を目的として、Pummerer型反応およびC_2対称光学活性ジオールを利用する反応について研究を行い、以下の成果を得た。 1.最近、我々はO-シリルケテンアセタールとスルホキシド自身に不斉点を有する非環状キラルスルホキシドとの反応で、高エナンチオ選択的な不斉Pummerer反応が進行し、光学活性α-シロキシスルフィドを与えることを見出した。本年度はさらにα位およびスルホキシド上の2点に不斉点を有する非環状の系での反応を検討した結果、100%の不斉誘導率で不斉Pummerer反応が進行することを見出し、またその立体化学は、α位のキラリティに支配されることを明らかにすると共に、その反応機構を明らかにした。また、平成7年度以降に計画していたペニシリン生合成機構に関する研究を行い、Arnsteinトリペプチド(LLD-ACV)類縁体より、cis-b-ラクタムの生成に成功し、本反応を用いてペニシリン生合成機構を考察した。 2.C_2対称光学活性ジオールを利用する不斉合成として、キラルなヒドロベンゾイン由来のγ,δ-不飽和アセタールを、求核種(ROH,RCOOH)の存在下に親電子反応剤と反応させると、まず親電子反応剤がオレフィンと反応し、生じたカルボカチオンに対しアセタールの酸素原子が求核攻撃し、オキソニウムイオン中間体を経て、アセタールの開裂と求核種(ROH,RCOOH)の攻撃が同時に進行し、8員環アセタールが高ジアステレオ選択的に得られることを見出した。
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