研究概要 |
本研究では、銅イオンを活性中心に有するオキシダーゼであり、アミノ酸残基が直接電子授受を行う重要なサイトとして考えられているガラクトースオキシダーゼ(GAO)を用いて、その酸化還元反応を電気化学的に制御すると共に、電子伝達機能の解析を行うことを検討した。 まず、GAOと電子授受を行うメディエーターを選択するために、1-Methoxy PMS,Meldolas'Blue,p-Bezoquinone,Ferrocenylmethyl-trimethylammonium bromide,Ferrocene monocarboxylic aciなどを検討した。その結果、Ferrocene monocarboxylic acidをpH9の緩衝液中で用いた場合、良好なメディエーターとして機能することが明らかとなった。Ferrocenylmethyl trimethylammonium bromideも電流の増加を示したが酸素の酸化電流の影響を受けやすい電位であるため明確なメディエーター機能を認めることはできなかった。なお、その他のメディエーターとGAOとの電子授受は観測されなかった。次に、Ferrocene monocarboxylic acidを用いてk_f/a vs. 1/sプロットによりk_f(pseudo-first-order rate constant)及びk_s(=k_f/[z])(homogeneous second-order rate constant)を算出したところ、k_f=65.2s^<-1>,k_s=13.0x10^5l mol^<-1> s^<-1>の値が得られた。なおGAOはpH=6付近に酵素活性の最大が認められるが、Ferrocene monocarboxylic acidを用いた場合にはpHが6及び7の時には、メディエーター機能を示さなかった。このことは、Ferrocene monocarboxylic acidとGAOとの相互作用のpH依存性を反映している。Ferrocene monocarboxylic acidがメディエーター機能を示したpH=9の状態は本来の酵素の最適条件とは異なり若干変性した状態とも考えられる。そこで積極的に変性剤を用いてGAOに構造変化を与え、メディエーターとの電子授受への影響について調べた。そこで変性剤として塩酸グアニジンを用い、変性剤の濃度を変化させることによりGAOの構造変化にともなう、I_k(kinetically-controlled current)/I_d(diffusion-controlled current)の変化を測定した。その結果、1Mの塩酸グアニジンを共存させたところ、10%以下にI_k/I_d値が減少した。そこで次にGAOの反応基質としてガラクトースの代わりに3-Methoxybenzyl alcoholを用いて同様の実験を行ったところ、1Mの塩酸グアニジンを共存下でも未変性時の約30%のI_k/I_d値を保持した。このことは基質に対する酵素の反応特異性が変性過程で異なることを示すと考えられた。
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