研究概要 |
非ヘム鉄を活性中心とするカテコールジオキシゲナーゼの酸素化機能をモデルに,芳香環の酸素化開裂反応の1)高い触媒活性を実現すること,2)高い選択性を実現すること,3)2価および3価鉄による異なった選択性を制御する機構を解明することを課題として,単離カテコール鉄錯体の反応活性を中心に検討した。我々の開発したFeCl_3/pyridine/catecholのTHF中での反応系では,Fe^<3+>錯体を用いた反応でも,Intra-およびExtra-diol型反応が起こる特徴を示したが,キノン生成を伴うために触媒活性が低い。この問題を打破する為に,溶液中から単離した錯体の反応を検討したところ,カテコールの添加により配位カテコールが酸素と反応し,触媒的に酸素化生成物を与えること,単離錯体におけるカテコール配位子が,添加したカテコールとの配位子交換反応の過程で活性化されることが重要と考えられた。 一方,Tripodal配位子(TPA)を有するFeCl_3/TPA系でも反応は触媒的に進行し,選択的にintradiol型生成物を与えることが分かったが,FeCl_3/pyridine系と異なり,反応が1原子酸素添加で停止することが分かった。反応系にpyridineを添加すると2原子酸素化によるラクトン酸とそのカテコールエステルが生成することが分かった。このエステルは,ラクトン酸からではなくムコン酸無水物から生成するので,Fe(TPA)系がジオキシゲナーゼモデルとして妥当かどうか検討する必要があることが分かった。 2価鉄酵素による芳香環のExtradiol型開裂について,本研究において2価鉄による選択的なExtradiol型開裂を初めて実現することができた。従来の機構を訂正するとともに,2価鉄錯体による酸素化を触媒的に進めるにはどのような工夫が可能か検討してきた。Fe^<2+>系でFe^<3+>への酸化,Fe^<2+>への基質の配位に対するプロトンの影響があることを示す結果が得られ,反応性の改良,機構の解明に役立つ結果である。
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