研究概要 |
1.ビスベンゼンクロムの0価(1)と1価(2)の間の可逆的な一電子酸化還元過程を有機化合物の酸化還元に利用できれば、新しい酸化還元触媒や電荷移動相互作用を利用する有機導電体の開発が可能になると考えられる。本研究では、種々のベンゼン誘導体や[3.3]シクロファン等のπ-配位子に希土類を含む前周期遷移金属原子を反応させてπ-アレーン錯体を合成し、それらの分子構造、金属の電子状態、酸化還元挙動等の基礎的な物性を明らかにする。 2.今年度は、 (1)金属と配位子の蒸気を高真空中極低温(-196℃)で共凝縮させる金属蒸発法に基づく反応装置を作成した。この装置では、一回の反応で5×10^6Torrの高真空下に約1gの金属を反応させることができる。この装置を用いてビスベンゼンクロム誘導体の最適生成条件を調べ、得られた空気に敏感な錯体の精製法と取扱い法について検討した。現在、(η^<12>-[3.3]パラシクロファン)Cr(0)の合成を試みており、今後は前周期遷移金属原子のπ-アレーン錯体を得る予定である。また、π-配位子である[3.3]メター、パラ-、[3_3](1,3,5)-、[3_4](1,2,3,5)-、[3_4](1,2,4,5)-、[3_5](1,2,3,4,5)シクロファン類、ならびに、1,3,5-tri-t-butylbenzeneを必要量合成した。 (2)合成したビスベンゼンクロム誘導体を用いて、有機化合物の一電子還元反応を検討した。 (3)前周期遷移金属π-アレーン錯体と性質を比較するために、化学合成法により[3_n]シクロファン類とRu^<2+>の単核錯体およびFe^+の二核錯体を合成した。これらの^1HNMR,電子スペクトル、ならびにFABマススペクトルにより構造について調べた。
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