研究概要 |
1,2‐エチレンジチオラト錯体[CpCoS_2C_2H_2]を脱水素縮合することにより、π共役した二量体や環状三量体が生成した。単量体、二量体[(CpCoS_2C_2H)_2]、環状三量体[CpCo(S_2C_2)]_3の順に、λ_<max>が551,640,688nmと長波長側にシフトし、π共役系の拡がりを支持した。環状三量体は、電気化学的に三段階の1電子還元をうけ、Co(III)Co(III)Co(III)から2段の混合原子価状態を経てCo(II)Co(II)Co(II)へ還元されることが明らかとなった。Bu_4NClO_4‐THF系におけるITバンドの解析からCo(II)Co(II)Co(III)の方がCo(II)Co(III)Co(III)よりも金属間の電子的相互作用が強いと考えられる。[CpCo(S_2C_2)]_3のNa還元では上記結果と対応する三段階のESRスペクトル変化を示し、特にCo(II)Co(II)Co(III)においては一重項ビラジカルとなるが、Co(II)Co(II)Co(II)においては3つのスピンが強磁性的相互作用を示すという興味深い結果が得られた。 メタラサイクルπ共役高分子錯体の合成として、CpCo(PPh_3)_2と共役ジアセチレンHC≡C‐A‐C≡CH(A=1,4‐phenyleneなど)との反応を行ったところ、高収率で不溶性のpoly(arylene cobalta‐cyclopentadienylene)が得られた。さらに(hexCp)Co(PPh_3)_2を原料とするとポリマーが可溶性となることを見いだした。これらの高分子錯体の酸化電位は単核錯体と殆ど同じであり、還元電位は重合度の増加と共に貴側へシフトするという特徴を示し、このことはπ共役系軌道のLUMOへの大きな寄与を意味している。
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