研究概要 |
本研究では、トリフルオロメチルケトンの特性に着目し、電解系で活性反応種を発生させ、これを利用する有機合成反応の検討を行なった。具体的には、トリフルオロメチルケトン体1とアクリル酸エステル2の交差電解カップリング反応をモデル反応として検討した。 電解は、単一セル中、トリフルオロアセトフェノン1a(100mg,0.53mmol)、アクリル酸t-ブチル2a(0.4mL,2.65mmol)および支持塩としてEt_4NOTs(300mg)をジメチルホルムアミド(5mL)に溶かし、2枚の亜鉛電極(1.5x0.3cm^2)を用いて、10V(50-80mA)の定電圧下で2時間通電を行なった。支持塩として、Et_4NOTsを用いた場合、目的のカップリング生成物3aを64%で得た。また、他の支持塩として、Et_4NClO_4,Et_4NBr,Bu_4NBF_4,LiClO_4を用いて同様に電解を行なったところ、カップリング生成物3aは22〜37%であった。 次に、電極の効果について調べた結果、アルミニウム電極でも良いことがわかった。溶出電極は、反応系内に陽イオンとして溶出するが、この金属陽イオンは、陰極で生成するアニオンラジカル種と相互作用することにより、ラジカル種の安定化に寄与するものと考えられる。 また、種々のトリフルオロメチルケトン1のアクリル酸t-ブチルエステル2a、あるいはメタクリル酸t-ブチルエステル2bとの交差カップリング反応も検討した結果、相当するカップリング生成物3が27〜68%で得られた。本反応の反応機構は、3種類考えられる。すなわち、トリフルオロメチルケトンが一電子還元され反応が進行するもの(Path A)、あるいはアクリル酸エステルが一電子還元され反応が進行するもの(Path B)。または、その両者の組合わせにより進行するものである。(Path C)。 以上の結果、亜鉛およびアルミニウムなどの反応性電極を用いてトリフルオロメチルケトンとアクリル酸エステルの交差電極カップリング反応が進行することがわかった。尚、^<19>F-NMRによる生成物の確認とともに、電気化学的なデータをもとにする詳細な反応機構の解明が今後の課題である。
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