研究概要 |
メトキシル基またはアミノ基を有するヒドロジシラン1a,bを配位子前駆体とする新しい一段階の反応によって,ドナーで架橋安定化された初めてのビス(シリレン)ルテニウム錯体2およびタングステン錯体3の合成に成功した。これらの錯体の各種分光学的性質および結晶構造を明らかにすると共にいくつかの求核試薬との反応性を調べ,金属-ケイ素不飽和結合がM^<δ->-Si^<δ+>型に強く分極していることを示す証拠を得た。またタングステン錯体については,ドナー架橋ビス(シリレン)錯体として初めてSi-O結合の開裂とシリレン配位子の回転を経由するフラクショナルな挙動を見出し,温度可変NMR測定と全線形解析によりその活性化パラメーターを決定した。さらに基底三重項状態を持つ稀な有機金属錯体の一例として,架橋シリレン配位子を持つ初めての二核錯体4およびその誘導体の合成に成功し,その構造,磁気的性質および分光学的性質を明らかにした。またこの錯体はCpFe(CO)_2Meと第2級シランとの光反応によって生成するが,その生成機構について詳細な検討を加え,2種の中間体の単離等に基づいて可能性の高い生成機構を提案した。
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