研究概要 |
1)テトラアリールテルランの反応性を調べるため、安定なビス(2,2'-ビフェニリレン)テルランを用い、各種フェノールとの反応性について研究を行なった。その結果、反応中間体に対応する化合物が室温にて安定に単離でき、そこから熱、及び光分解によりリガンドカップリングまたはイプソ置換生成物が得られてくることが分かった。さらに中間体における中心原子とカルコゲン原子間の結合の有無については、フェノール、p-ニトロフェノールとの反応から得られる中間体についてX線結晶構造解析を行ない、テルル-酸素間の結合距離がテルル-酸素共有結合距離である2.10Åとほぼ変わらない2.29Å、2.46Åであることから、この中間体はテルル-酸素結合を有する新規テルランであることを明らかにした。一方、興味深いことに、2,4,6-トリクロロフェノキシ基を持つ場合、テルロニウム塩に良く見られる二量体構造をとることが明らかとなった。次に溶液中におけるこれら中間体の挙動を調べるため、種々の溶媒により^<125>TeNMRの測定を行ったところ、化学シフトに変化が見られ、それを用いた溶媒のドナーナンバーと共にプロットしたところ、両者に相関性があることが判った。また得られた傾きとσp値の間にも相関性を見いだした。 2)2,6-ジメチルフェニル基をエカトリアルリガンドとして持つジハロ-,ジアシロキシテルランを合成したところ、そのエカトリアルC-Te結合に回転障壁が生じることを見いだした。温度可変の^1H-NMR測定によって回転障壁のΔG^‡を求めたところ、その値は15.2-23.8kal/molであることがわかった。 1,1'-Spirobi(3H-2,1-benzoxatellurole)-3,3'-dione[10-Te-4(C202)]を合成し、X線結晶構造解析を行なったところ、その構造は歪んだTBP構造をしていることがわかった。
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