研究概要 |
1.ラダーポリシランの創製 四環式および五環式ラダーポリシランを合成し、構造をX線結晶構造解析により決定した。これらの化合物の二本のポリシラン鎖はねじれており、二重らせん構造を形成している。この結果は軸性不斉によるキラリティーの発現を強く示唆する。このような二重らせん構造は炭素類似体であるラダランの構造とは対照的である。すなわち、ラダランではほぼ平面構造のシクロブタン環がねじれることなく縮合し、いわゆる屏風形構造をとっている。ラダーポリシランにおける二重らせん構造はシクロテトラシラン環の折れ曲がり構造とその規則的な縮合様式によるものであるが、これはケイ素-ケイ素結合の柔軟さと置換基による立体効果に起因すると考えられる。 2.ラダーポリシラン ビシクロ[2.2.0]ヘキサシランをPdCl_2(PhCN)_2と反応させると、中央のケイ素-ケイ素結合が選択的に開裂して1,4-ビシクロヘキサシランが生成する。1,4-ビシクロヘキサシランにナトリウムを作用させるると、トランスアニュラー反応が起りビシクロヘキサシランが再生する。 オクタシラキュバンの骨格転位反応 オクタキス(1,1,2-トリメトルプロピル)オクタシラキュバンと五塩化リンとの反応では、新規のケイ素骨格転位反応が生起する。この反応の生成物の構造をX線結晶構造解析で調べたところ、いずれも骨格転位とともに2個の塩素原子が付加した立体異性体(endo,exo-体、exo,exo-体およびendo,endo-体)であることが明らかとなった。一方、これらの生成物はナトリウムによってオクタシラキュバンを再生する。このようなオクタシラキュバンの骨格転位反応と生成物の骨格転位によるオクタシラキュバンの再生は炭素類似体では見出されていない。
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