研究概要 |
トリフェニルアンチモンと一酸化炭素は、トルエン中、量論量のPdCl_2の存在下で反応し、安息香酸およびその他のカルボニル化合物を与えることが知られている。しかし、反応条件は厳しく(150〜200℃,CO圧150atm)、量論量のPdCl_2を必要とする。我々は、この反応を触媒量のPdCl_2(PhCN)_2を用い、酸化剤存在下メタノール中で行うと、常温、常圧で安息香酸メチルとベンゾフェノンが良い収率で生成することを見出した。種々の酸化剤を検討したところ、硝酸セリウムアンモニウム(CAN)が特異的に有効であり、1 mol%のPdCl_2(PhCN)_2を用いてほぼすべてのフェニル基が用いられてカルボニル化合物(主としてメチルエステル)が生成することが明らかとなった。他のパラジウム(II)塩なども有効であり、またPd(PPh_3)_4やPd_2(dba)_3などの0価錯体を用いても同様に反応が進行する。酸化剤として、他にCuCl_2,Cu(OAc)_2,AgOAc,K_2S_2O_8,K_2S_2O_8/AgNO_3,FeCl_3,K_3Fe(CN)_6,p-benzoquinone,DDQなどを検討したが効果はなく、Ce_2O,CeCl_3,Ce(OAc)_3・H_2O,CeF_4・H_2Oなどのセリウム塩は全く効果を示さず、Ce(SO_4)_2・nH_2Oだけがわずかに活性を示した。反応はAr_3SbとPdCl_2の錯体形成、Ar基のPd上への移動(トランスメタル化)、CO挿入によるアロイルパラジウム(II)種の生成を経て進行するものと思われる。これらの結果については、アメリカ化学会の有機化学誌に報告した。
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