研究概要 |
複数のリチオ化可能位置をもつ分子において適当な方法、条件下それぞれの位置を選択的にリチオ化できるならばその分子の合成中間体の有用性は大きく増大する。我々は既に他の目的の研究からジ(2-チエニル)メタンの2ケ所での選択的リチオ化の必要に迫られ、検討した結果、選択的リチオ化を達成し選択性の支配要因を明らかにした。 この多重選択的リチオ化の一般性、適用性を明らかにするために今年度以下の系で選択的リチオ化を研究した。 トリ(2-チエニル)メタンは種々の塩基でほとんど中心メチン炭素でのリチオ化が起きるが、リチウムイソプロピルアミドを塩基として用いるとイソプロピルアミンを会してチオフェンの5位のリチオ体が平衡としてわずかに存在し、中心炭素リチオ体に比べその反応性が高いために求電子試剤の多くはチオフェンの5位に反応することが明らかになった。この結果は合成上大変有用な応用性をもち、我々はこれをチオフェン環で拡張されたトリメチレンメタン類の合成に適用した。 (b)トリ(4-ブロモフェニル)メタンでは中心炭素と臭素置換の炭素での多重選択的リチオ化の可能性があるが、THF中ブチルリチウムの作用で全ての臭素のリチウムとの交換がスムーズに起こりトリリチオ体が高収率で生成する。一方、ジメチルスルホキシド中ジムシルアニオンでは中心炭素が選択的にリチオ化される。前者のリチオ化が動力学支配であるのに対し、後者のリチオ化は熱学支配として矛盾なく説明できる。 (c)この他、トリ(4-メトキシフェニル)メタン、1,1-ジハロ-2,2-ジ(4-ハロフェニル)エテン、2-エチニルチオフェンなどについても検討し興味ある知見が得られつつある。
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