研究概要 |
超高真空排気装置に10Kまで冷却可能な極低温冷凍機,プラズマスプレー用グロー放電管,四重極質量分析計,排気用にタンデムターボ分子ポンプを取り付けた。プラズマスプレーにより,窒素,一酸化炭素,炭素,アセトン,ユ-プロパノールなどを冷却した基板上に蒸着した。これを,水素ガスをプラズマ分解して生成した水素原子と反応させた。N_2マトリックス中に捕捉されたN原子とH原子の反応においては,H原子がN_2マトリックス中を少なくとも200Å以上拡散移動し,膜中のN原子を水添して,アンモニア分子を生成することが分った。COとH原子との反応においては,H原子が,トンネル反応機構で,COのC側に付加し,HCOを生成し,これが逐次,H原子と反応して,ホルムアルデヒド,さらには,メタノールを生成することが分った。また,反応CO(q^3π)+CO(q^3π)→C+CO_2を利用して,冷却基板上に,C原子をCOマトリックスとともに蒸着し,H原子と反応させた。反応生成物の昇温脱離マススペクトルの測定により,極めて効率よく,メタンが生成することが分った。これらの実験結果は,星間空間に存在する冷えた星間塵が宇宙の化学進化に重要な役割を果たすことを世界に先駆けて検証したものである。
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