励起ラジカルや分子からの中性断片への解離を研究するために、負イオン検出法を用いた電荷逆転MS/MSを試作した。電荷逆転MS/MSでは質量選択した正イオンをアルカリ金属ターゲットに衝突させ生成する負イオンを質量分離して検出する。アレン(CH_2=C=CH_2)とプロピン(CH_3-C≡CH)の電子衝突により生成するC_3H_4^+イオンについてCsターゲットを用いた電荷逆転質量スペクトルを測定した。プロピンを試料ガスとした場合のC_3H_4^+から1ヶの水素原子を脱離して生成するC_3H_3^-イオンピークはアレンの場合と比較するとその強度が約2でピーク幅も広くなっている。 一方、2つ以上水素原子を脱離して生成するC_3H_n^-(n=0〜2)ピークはプロピンとアレンで同様の強度比とピーク幅を与える。電荷逆転スペクトルにおけるC_3H_4^+異性体イオンの相違は中性化で生成する励起C_3H_4のレベルとそのレベルからの解離過程により説明される。アルカリ金属ターゲットを用いた電荷逆転MS/MSは励起ラジカルから中性フラグメントへの解離過程の研究に非常に有用であることが分かった。
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