希ガスに希釈したFe(CO)_5を分子線として吹き出した直後ArFエキシマーレーザーを照射し、光解難による生成可能なFe(CO)_4を2000cm^<-1>と1985cm^<-1>の領域で、Fe(CO)_3を1950cm^<-1>で、Fe(CO)_2を1920cm^<-1>で赤外半導体レーザーを用いてその赤外吸収スペクトルの測定を試みた。1920cm^<-1>にFe(CO)_2と思われる弱い吸収スペクトルが測定されたが、帰属するまでには到らなかった。この弱い吸収スペクトルの強度を増やすために、試料系を温めてFe(CO)_5の蒸気圧を上げることを試みた。一時的に測定されるスペクトルの強度は強くなったが、スペクトルの再現性などに問題があり、Fe(CO)_5が高温で分解されやすい分子であること、また吸収スペクトルと同時に強い赤外発光が混ざり、分光器によって分光する必要性が分かった。 分子線中のFe(CO)_5にArFエキシマーレーザーを照射し、分光器を用いて赤外発光を測定した結果、赤外発光には二種類あり、一つは2127cm^<-1>附近に発光寿命約5μ秒の鋭いスペクトルであり、他方2250-1840cm^<-1>にかけて発光寿命約100μ秒の遅い発光であった。発光寿命の短い発光はエキシマーレーザーの出力依存が強く、多光子解難反応が関与していることが分かり、遅い発光は一光子吸収過程であることが明らかとなり、異なる解離機構が示唆された。
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