研究概要 |
解離性電子付着により負イオンと中性ラジカル種を生成する過程を対象とし、パルスラジオリシス・マイクロ波加熱空洞法を適用して、平均電子エネルギーを熱エネルギーから約2電子ボルトまで変化させたときの反応速度定数を測定し、それを反応断面積の電子エネルギー依存のデータに変換した。前年度に引き続いて、塩素や臭素を同時に含む化合物、およびヨウ素を含むエタン・プロパン化合物に拡張して調べた。塩素と臭素を同時に含む化合物CHBr_2Cl,CBrCl_3,CH_2BrClにおいては、いずれも断面積は0 eVにピークをもつが、その絶対値はかなり異なり、上記の順に一桁程度ずつ小さくなる。ただし、高電子エネルギー部(>0.2eV)ではCBrCl_3が最も大きい。構造が類似する塩素のみを含む化合物あるいは臭素のみを含む化合物との定性的な相関は見られなかった。ヨウ化エタンのC_2H_5IとC_2F_5Iとでは、後者の法が前者よりも速度定数、断面積共に低電子エネルギー領域で2桁程度大きいが、高電子エネルギー(>0.2eV)領域で逆転する。ヨウ化プロパンの1-C_3H_7I,1-C_3F_7I,2-C_3H_7I,2-C_3F_7Iでは、速度定数はいずれもパフルオロ化された方が大きい。しかし断面積には著しい相違がみられ、パ-フルオロ化されたものはいずれも0.4付近と1.5eV付近に大きなピークを示し、それぞれF^~,C_3F^~_7生成に対応すると考えられる。パ-フルオロ化されていない方は全体として緩やかなピークしか示さず、F^~生成のみに対応すると考えられる。本年度に新しく電子エネルギーのみならず、媒体温度も同時に可変な実験法の開発を試みた。マイクロ波空洞の構造を工夫し、媒体温度を室温から700Kまで連続に変化できる手法を確立した。いくつかの臭素化合物とヨウ素化合物について予備的データは得ているが、まだ若干感度の向上が要求される。
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