研究概要 |
電子衝突による多価イオンの励起過程の研究において、R-行列法は今日最も精度の高い励起断面積を求めることができる近似法である。特に、入射電子のエネルギーが低い場合、衝突過程に起こる共鳴をよく導出できる。本研究では、本重点領域研究の計画研究において「電子と多価イオン衝突における実験研究」で進められている多価イオンの励起過程の研究に呼応して、多価イオンであるArVIIIの励起過程についてR-行列法を用いて研究した。 R-行列法において、7個(3s,3p,3d,4s,4p,4d,4f)および11個(7状態プラス 5s,5p,5d,5p)の標的の状態を考慮した研究を行った。各々の場合に基底状態からnl(n=3,4,l=0,1,2)状態への励起における積分断面積と微分断面積を求めた。3s-3p遷移の積分断面積については、本研究の結果は米国の研究グループの唯一の実験結果と実験誤差の範囲内で一致した。また、微分断面積については、100eVの入射電子のエネルギーにおいて唯一実験がなされているが、これらの結果ともよい一致を得た。各遷移において衝突における多価イオン特有の多くの共鳴を得たが、これらは今日まで実験的に確認はされていない。本重点領域研究の実験グループが確認できるものと期待している。この研究の結果は平成7年7月にカナダにおける国際学会に報告する。この研究を、さらに、ナトリウム様の他の多価イオンであるSiIVおよびSVIに適用して、ナトリウム様イオンについての物理的性質を研究している。
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