研究概要 |
本課題では,LESの数値計算手法およびSGSモデルに関して以下の3点の研究を行った. 1.エネルギー保存型差分の検討.LESによる応用乱流解析では空間的な離散化手法に差分が用いられるが,LESの基礎式を安定に時間積分するには,非粘性の極限で運動量とエネルギーが同時に保存される差分を用いる必要がある.そこで,オイラー方程式を用いて,各種差分スキームの運動量とエネルギーの離散的な保存性を検討した.その結果,連続の式と計算アルゴリズムとの離散的な整合性が重要なこと,スタガード格子のエネルギー保存性が優れていること,レギュラー格子とコロケ-ト格子では圧力項の離散化に起因してエネルギーの保存性が低下することが示された.また,レギュラー格子とコロケ-ト格子に対する問題点の改善方法も提案した. 2.多係数ダイナミックSGSモデルの提案.LESの新しいSGSモデルとしてダイナミックSGSモデルが注目されているが,従来のダイナミックSGSモデルでは勾配拡散型のモデル関数のみが用いられているので表現できるSGS応力に限界がある.これを改善するため,複数のモデル関数の線形結合としてSGS応力に近似する多係数ダイナミックSGSモデルの構成方法の提案を行った. 3.回転系一様乱流のDNSコードの作成およびDNSデータベースの構築.LESのSGSモデルの信頼性の検討にはDNSデータベースの利用が有効である.そこで,回転系一様乱流に対するDNSコードを作成し,スペクトルモード数64^3のDNSを実行してDNSデータベースを構築した.このDNSコードでは,空間的には擬スペクトル法,時間的には4次精度のルンゲ・クッタ法が使用されている.DNSデータベースの信頼性は乱流統計平均量やレイノルズ応力の輸送方程式の収支により確認している。同時に,座標の回転が乱流に及ぼす影響についても調べた.
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