研究課題/領域番号 |
06232101
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
新美 成二 東京大学, 医学部(医), 教授 (00010273)
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研究分担者 |
世木 委明 千葉工業大学, 工学部, 講師 (60226636)
今泉 敏 東京大学, 医学部(医), 助教授 (80122018)
桐谷 滋 東京大学, 医学部(医), 教授 (90010032)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1994年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | 対話 / 音声生成 / 難聴 / モ-ラ / 発話速度 / 感性情報 / 時間構造 / 健聴 |
研究概要 |
対話における発話は自己や相手のイメージ、状況把握など種々の要因に応じて変化する動的過程である。本研究では、調音制御レベルでの時間構造調節が分節的特徴のみならず感性的特徴(聞き手が感じる話者に対する親近感、安心感など)にも及ぼす影響とその意味を検討した。具体的には、難聴学級教師と難聴児、健聴児との会話音声と朗読音声を、無声化が起こる環境での母音を焦点に解析し、以下の結果を得た。1)教師は会話音声の中でも特に難聴児に対してモ-ラを延長させる傾向があること、モ-ラの延長はモ-ラの種類(語頭語中、アクセントの有無)に依存していることが示された。2)対象モ-ラの無声化率を比較すると、教師全員で、対健聴児音声>対難聴児音声、朗読音声>対難聴児音声と、難聴児に対して無声化率が低かった。3)感性情報の聴覚的評価においては、朗読音声と対話音声間の差異を表す因子と対難聴児音声とその他を対比する因子が抽出された。前者は「拒否的な、せわしい」対「丁寧な、心優しい、ゆったりした」などの対立に、後者は「判りやすい、強い、遅い」対「せわしい、生気のない、にぶい」の対立と比較的高い相関を持っていた。4)モ-ラ長は無声化率の全分散の53%を説明すること、文の長さ、ターゲットとなる単語の長さなどが、感性情報に対して60%程度の高い決定率を示した。5)以上を総合して、時間構造の調節が会話音声の分節的特徴のみならず感性的特性にも影響を及ぼすことが示された。時間構造の設定は、分節的特徴の設定を通じて明瞭度に直結する可能性があるとともに、一方、感性的特性の設定を通じて相手に安心感や親近感、信頼感をもたらし、会話をスムーズに運ぶために大きな役割を果たし得るものと考えられる。今後はさらに音響的・生理学的観測に基づき、対話における音声生成の動的過程のモデル化を行いたい。
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