本研究では、発話理解=情報統合という考え方に基づき、対話から知識(情報)を獲得する小さなプロトタイプシステムを作成した。本プロトタイプシステムの特徴は以下の通りである。 1.発話に対する処理の最終目標は、発話の内容を既知の情報に関連付けて格納すること(既知の情報への統合)である。 2.既知の情報への統合は、適当なタイミングに適当な単位によって行なわれる。 (a)表層的なキ-によって、名詞的な要素(スペース)の同定が起動される。 (b)文の終了によって、関係(リバーススペース)の統合が起動される。 3.疑問文に対する処理は、平叙文の処理+αであり、その主要部は同じである。 4.話題の中心は、ベーススペースとして保持され、文の終了によるリバーススペースの統合は、その時点のベーススペースに対してなされる。 このシステムは、限られた範囲ではあるが、ユーザーとの対話から知識を獲得し、その知識を使って、ユーザーの質問に対して答えることができる。 このシステムを作成することによって、対話からの知識獲得モデルの大枠を動く形で示すことができたと考える。今後は、このシステムの細部をつめるとともに、情報統合の失敗に基づく応答(質問)の生成機構などをシステムに組み込むことが必要である。
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