研究概要 |
電界放射陰極に電子オーダーの突起を形成し,そこの限定された原子からの放射電子のエネルギー分布,スピン偏極度等の情報に得る目的で,まず突起形成技術の確立をめざしました。レニウム陰極について熱電界法による電子オーダーの微小突起形成にに対する印加電界強度,加熱温度領域等の条件を明らかにしました.基本的にはBuild-upによる変型を生じる最低電界によって規格化された電界強度を揃えることで,通常の陰極に対しては条件を設定できる事を示しました.またこの様にして得られる突起の寸法に関して実験と理論双方からの検証を行い,10mmオーダーが実現できることを確認しました.さらに詳細な研究のために電界イオン顕微鏡による観測の必要性を示しました.但し,特に先端曲率半径の小さな陰極に於いては,突起形成条件が満たされても,静電応力による格子欠陥の導入に伴う変型,表面の相変化など,形成される突起の形態を著しく変える副次的効果に注意する必要があることを見出しました. レニウムに比較して融点の低いニッケル,鉄等の強磁性体材料では,熱電界法による突起形成に加えて,より低温で形成でき広範囲の陰極材料で先鋭な先端を容易に整形できる,収束イオンビームを利用した陰極形成技術の開発を並行して進めました.これにより先端曲率半径10mm程度,先端開き角15°以内の陰極を制御性良く得る方法を確立しました. 半導体陰極の場合,金属に比べて脆く,対称生の良い針状の陰極として整形する方法自体の再現性が問題でこれらの点についても検討を進めました. 本研究の主要経費として申請されていました,計算機制御可能な高耐圧フローティング型電流計及び高電圧電源が製作され,実験に利用されました.これらは既存技術の組み合わせに依る機器ですが,実験効率を著しく改善しました.
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