研究概要 |
フォトニックバンド構造はサブミクロンオーダーの微細周期構造であり,光の発生,伝搬を制御する新しい概念として注目されている.しかし光半導体デバイスに適用するためには,具体的なデバイス構造,製作法,期待される効果,などの問題を同時に検討する必要がある.本研究では,これらの問題をバランスよく解決する2次元構造からその研究を開始した.そしてRIBEエッチング法と陽極化成エッチング法という2種類の加工法を調べ,代表的な光半導体であるインジウム燐に対してどちらの方法でも目標とする微細構造が低損傷にて形成できる見通しを得た.前者では本科学研究費にて購入したECRプラズマ源を用い,インジウム燐に対して効果的なエッチングが行えるメタン系ガスを採用し,実験を行った.そして特に低ガス圧のプラズマによるエッチングを試し,従来の装置と比較しても非常に高速なエッチング条件を見いだした.このようにフォトニックバンド構造を製作するための基礎条件が得られたので,この方法と電子線描画法などと組み合わせることで自由な形状の周期構造が可能である.一方,陽極化成法は結晶方位に依存した特定形状の構造しか得られないが,RIBEでは不可能な非常に深く微細な構造がきわめて低損傷にて自動形成されるという特徴が見いだされた.今後,これら2つの方法を並行して研究し,それぞれの利点を生かした構造の完成を目指す.また本年は,2次元フォトニックバンド計算より,効果を得るための条件や,構造の詳しい形状に対する依存性などを理論的に明らかにした.その結果,従来提案されている2次元構造よりもはるかに製作が簡単な2重円柱の配列構造に対して同様の効果が期待できることが明らかになった.以上の研究成果を総合し,最終的にフォトニックバンド構造の効果を測定することがこれからの課題といえる.
|