研究課題/領域番号 |
06239238
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
TRAN-CONG QUI 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助教授 (50188827)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1994年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | フォトクロミック分子 / PMMA / 偏光励起 / シクロファン / 光二量化反応 / ガラスの局所緩和 |
研究概要 |
本研究では、ガラス領域におけるポリメチルメタクリレート(PMMA)中に分散したフォトクロミック分子を線偏光照射し、反応を誘起した。偏光照射に対するフォトクロミック反応の選択特性と反応動力学をまず明らかにした。さらに、この選択的特性によって形成した光学的異方性の緩和過程を観測することにより、高分子ガラス領域における低分子の極端に遅い再配向緩和を直接測定した。 フォトクロミック分子はそれぞれ9-hydroxymethy1-10-{(naphthylmethoxy)methy1}anthracene(HNMA)とCyclophaneを用いた。この2つの分子は類似した化学構造、すなわちアントラセンとナフタレンが3原子からなる短い鎖で連結されるが、HNMAの場合では分子内のコンフォメーション転移が可能であるため、アントラセンの回転緩和をモニターすることができるのに対して、Cyclophaneが環状構造を有するため、分子全体の回転に関する情報が得られた。PMMA中にランダムに分散させ、アントラセン環の吸収二色性の照射時間依存性を追跡し、試料の光学的異方性の形成過程の動力学について検討した。さらに、暗所で試料を加熱することにより、その光学的異方性の緩和からフォトクロミック分子の遅い回転緩和を測定した。得られた結果は次の通りである。 1)PMMAのガラス領域では、偏光に対するCyclophaneとHNMAの反応選択性はPMMAのβ-緩和過程(エステ-ル側鎖の回転)過程に支配される。 2)Tg以下のPMMA中では、HNMAの回転緩和時間の活性化エネルギーが約7.8Kcal/moleであった。一方、Cyclophaneの場合では、回転緩和の活性化エネルギーは約20Kcal/moleであった。前者はPMMAのγ-緩和(αCH_3基の回転)の活性化エネルギーにかなり近く、後者では、PMMAのβ-緩和に対応している。 3)高分子ガラス中に形成した光学的異方性は室温で2年間にわたり約50%しか減衰せず、高い保存安定性を示唆している。 本研究で提案した方法を用いれば、ガラス状高分子の屈折率分布を創生・制御できるのみならず、Guest/Host系に基づいて作製した長期的に安定な非線形光学高分子材料の設計指針も与えていると考える。
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