研究概要 |
含硫黄遷移金属錯体(メタラジチオレン)の光反応の特性--特に-磁性に関わる特異な挙動一を次の系について検討した。 1)S,S-位がジアルキル化されたメタラジチオレン錯体の光照射によって、室温、ベンゼン溶液中で100s以上の長寿命を持特異なラジカル種が生成することを見出し、その挙動を架橋型付加体について調べた。1,4-ブタンジイルを架橋部位とするニッケル錯体の光解離の3段階で進み、10s程度の寿命で再結合して元に戻るものと、さらに長寿命の遊離のジチオレンに解離する金属錯体ラジカルが存在することを結論した。同種の反応が、パラジウム、白金錯体においても起こる。中間に生成する金属錯体ラジカルの寿命は、Pd>Ni>Ptの順であり、パラジウムを中心金属とする錯体ラジカルの寿命は数十分に達する。 架橋部位がノルボルナン-2,3-ジイルの場合には、光解離の効率が、1,4-ブタンジイルを架橋部位とする錯体の1,000倍程度に高まる。一方、ベンゼン溶液での光反応においては、ESRでラジカル検出することが出来なかった。結晶状態で光解離を行った場合、ESRで金属錯体ラジカルが検出されることから、非常に短かい寿命の金属錯体ラジカルを経由する多段階反応であると考えられる。 2)DMADは熱的にコバルタジアゾール環のCo-S間に付加する。この付加体に光照射すると、DMAD部分がジチオレン環に入り、ベンゾニトリル部分が放出されることを見いだした。この付加・脱離反応は、いずれも可視部における大きなスペクトル変化を伴っており、また同期したスペクトルと磁性の変化を生み出すものであり、光応答系として興味深いものである。
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