研究概要 |
縮退四波混合法及びその一形態である二波長レーザー誘起ダイナミックグレーティング(TC-LIG)法を分子分光へ応用し、単一振動回転遷移の不確定性に基ずく線幅の広がりを測定することから高励起状態の前期解離速度を直接決定した。具体的には、195〜215nmの紫外パルスレーザー光(ポンプ光)によってNO分子を基底状態X^2IIから中間励起状態A^2Σ^+の単一振動回転準位に選択励起する。この際、ポンプ光をほぼ強度の等しい2本に分けその間に約2〜3度の角度をつけておくことにより、中間励起状態のpopulationの変調すなわち空間的回折格子(周期的な屈折率変化)が形成される。位相整合条件を満足する角度から励起状態間の遷移周波数に相当するプローブ光を導入し、回回折強度を周波数領域でのスペクトルとして計測する。3dσ,πH_2Σ+,H′_2II(v=2)状態について、TG-LIGスペクトルの解析から本研究で初めて67300から67500cm^<-1>におけるエネルギー準位構造が決定された。このエネルギー領域では、H^2Σ^+,H′^2IIリュードベリ状態とH′^2II状態に交差するB^2II(v=26)バレンス状態が観測されるが、これらいずれも前期解離性状態でありこれまで蛍光は報告されていない。B^2II(v=26)状態では線幅の広がりは顕著ではなかったが、H^2Σ^+,H′^2II状態では図に示されるように線幅の広がりが回転量子数に依存することが明らかとなった。特徴としては、i)H′^2II状態では線幅の広がりはあまり認めれず量子状態依存性もない、ii)H^2Σ^+状態では回転量子数の低いところで顕著な線幅の増大(〜0.7cm^<-1>)が見られ、回転量子数とともに線幅は減少するのに対し、H′^2II^+状態はその逆の傾向を示す。H^2Σ^+状態の前期解離のメカニズムは、強く前期解離性のI^2Σ^l状態を経由したA′^2Σ^+状態とのhomogeneous interactionであると考えられている。H^2Σ^+と相互作用できるH′^2II^+状態だけが^2Σ^+性波動関数を取り入れることによって強い前期解離性を示すものと理解される。
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