研究概要 |
クロロクロム(III)テトラフェニルポルフィリン(ClCr^<III>TPP)は水分子あるいはピリジン(Py)が軸配位することにより、ClCr^<III>TPP(H_2O)およびClCr^<III>TPP(Py)を形成する。これらの物質をトルエン中でレーザー光照射すると水分子やピリジンを光解離する。その収率は極めて高く、前者で0.9、後者で0.6であった。このような光による軸配位子の解離は各種の金属ポルフィリン錯体で観測されるが、その解離収率は周囲の環場場により大きく異なる。その一例はヘモグロビン酸素錯体である。この錯体は光照射により軸配位子である酸素を解離するが、数十ピコ秒後には再結合してしまい、見掛上酸素の光解離は観測されない。これはヘムを囲む蛋白が、解離した酸素を捕捉してしまうからである。我々はClCr^<III>TPP(Py)やClCr^<III>TPP(H_2O)をポリスチレン膜に溶解し、軸配位子であるPyや水の光解離について研究した。その結果、(1)ClCr^<III>TPP(H_2O)は膜中でも水分子を解離するが、ClCr^<III>TPP(Py)はPyを光解離しない。(2)いづれの錯体でもトルエン中では観測できなかった4T_1,6T_2の励起状態が観測できる,(3)両励起状態は熱平衡にある,等が明らかになった。
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