研究概要 |
本研究では科学反応および物性両面からみて非常に興味深い性質を有する非天然化合物、有機フラーレン化合物および炭素三員環化合物、に着目し,その性質を利用して核酸と相互作用を示す化合物を合成するための方法論を確立するための研究を行った.我々はまず,フラーレン類の化学修飾法の開発を鍵に,核酸に対する認識能を持つフラーレン誘導体の設計と合成およびその生理活性評価を行ない,一方,炭素三員環化合物に関する独自の反応論的知見を生理活性化合物の設計と合成にフィードバックし,核酸やタンパク質と相互作用し生理活性を発現する化合物のデザインと合成および生理活性の評価を行なうこととした. 本年度研究では,フラーレン類の生理活性発現の機構について解明し,これにより,機能性フラーレン誘導体の設計の指針を得た.すなわち新規フラーレン修飾法を利用した分子骨格の構築を行なうことで核酸の高次構造の認識するフラーレン/核酸複合体を合成し,このものを用いて位置選択的な核酸鎖の切断を実現できた.フラーレン類と、代表的な生体関連物質である核酸との相互作用を明らかにすることに加え,放射性同位元素でラベルした水溶性フラーレンを合成し,試験動物に投与することでその生体内での動態についての初めての知見を得た.これらの結果は,今後,生体に対する影響や化学療法への応用への可能性にたいしさらに検討を深めるための重要な指針を与えよう.
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