研究概要 |
本研究では,光合成のエネルギー変換反応に携わる超分子タンパク質複合体の立体構造をX線結晶構造解析で明らかにし,超分子形成の必要性,超分子形成の機構,さらには構造機能相関などを,決定された立体構造に基づいて理解しようとするものである.本年度は,1)シアノバクテリアの集光性色素タンパク質,アロフィコシアニン,2)光合成細菌の反応中心複合体についてX線結晶解析を行った. 1)シアノバクテリアSynechococcus elongatusのアロフィコシアニン このアロフィコシアニンは,それぞれ分子量17,000の2種のサブユニット(α,β)の3量体構造である.結晶化は硫酸アンモニウムを用いて行い,シンクロトロン放射光によってX線回折実験を行った.晶系は三方晶系,空間群R32,その格子定数は a=b=188,c=61Åである.分子置換法によって結晶構造解析に成功し現在精密化を進めている(現在のR値は約24%).この結果,α_3β_3のユニットが2つ会合して結晶内に存在していること,色素分子であるフィシアノビリンは,α,β各サブユニットにそれぞれ1分子結合していることなどが明らかになった. 2)紅色光合成細菌Chromatium tepidumの反応中心複合体 Chromatium tepidumの反応中心複合体は,その生育温度が50℃を越える耐熱種由来のもので熱安定化機構の研究対象として興味深い.界面活性剤β-オクチルグルコシドで可溶化した標品を,沈殿剤に PEG4000を用いて結晶化した.シンクロトロン放射光を用いてX線回折実験を行い,晶系が斜方晶系,空間群P2_12_12_1,格子定数 a=136,b=197,c=82 Åであることがわかった.現在,分子置換法による解析を行っている.
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