研究概要 |
オワンクラゲの発光蛋白質エクオリンはCa^<+2>イオンの存在下Blue Fluorescent Protein(BFP)の励状態を生じ460nmに発光する.エクオリンは発光基質セレンテラジンとアポエクオリン(189 アミノ酸残基から成るアポ蛋白質)及び分子状酸素から組立てられているが,その精緻な構造は明らかにされていない.本研究ではこの生物発光に関与する超分子構造のダイナミクスを解明するため以下の検討を行った. 1)この構造解明に関連してアポエクオリンの活性部位をフォトラベル法により解明することを計画し,光感作性基トリフルオロメチルジアジリン基を有するセレンテラジン及びセレンテラミドの合成に成功した.この光感作性セレンテラジンも天然型と同様にアポエクオリンに取り込まれ,生物発光を行うことを確認した.又トリフルオロメチルジアジリン基を持つセレンテラミドは光照射により溶媒中のメタノールと反応することを知った.今後はこの半合成エクオリンを大量に合成し,フォトラベルアポエクオリンの酵素分解,マススペクトロメトリーを組合わせて活性部位を特定する. 2)セレンテラジンは環境により多彩な発光を示す.例えば86番目のアミノ酸を変化させたAQW86Fは天然460nmの発光を400nmにシフトさせる.ただ一種のアミノ酸の変化により発光波長が変わることは精緻な超分子構造を予想させる.BFPはEDTA,DTT存在下アポエクオリンとセレンテラミドを共に培養すると再生される.この時N-メチルセレンテラミドを用いても同様な蛍光が観測されることより,従来アミドアニオンの励起状態からの発光とされてきた発光種の構造について,新しくフェノラートアニオンである可能性が生じた.従来の学説の再検討を要する結果となった.この点は更に確認実験を続けている.
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