研究概要 |
天然に存在する有機化合物のなかには極めて強力で切れ味良く生体に対して機能する,いわゆる生物活性物質が数多く知られている.これらの物質は特異な構造を持ち,海洋生物毒パリトキシン,オカダ酸,抗腫瘍物質ハリコンドリンが非常に良い例であるが,これらについての理解は今日さらに分子認識という概念で捉えてはじめてさらなる発展をするとも考えられる.また,近年重要な課題として抗ウィルス剤の開発が進んでいるが,これらも天然低分子機能物質の発見で新たな展開が出来るのであって,これらが構築する低分子と生体高分子との複合体,つまり超分子の存在を理解することが今後極めて重要となるであろう.このように抵分子機能物質の存在は今後の生体機能解明上不可欠と考えられる.また,リンパ球細胞,腫瘍細胞の血管内皮細胞との接着の理解を更に発展させるためには接着を阻害する天然低分子化合物の発見が重要であり,ここで形成される超分子の構造機能を解明することでさらに強力に働く抗炎症剤,抗腫瘍物質の創製が達成されよう.以上のように,自然界に存在する超分子の理解が新しい自然科学の発展,新しい機能性低分子の発見,開発に直結すると言っても過言ではない.以下に本年度得られた成果を列記する. 1)沖縄産の二枚貝の有毒物質ピンナトキシンの構造を解明した. 2)抗HIV活性を有するジテルペン類を発見し,作用機序の解明を達成した. 3)血管内皮細胞接着分子VCAM-1の産生阻害物質を発見した. 本年度の研究では超分子形成についての具体的な結果については得られていない.しかし,今後研究は超分子の構造,機能について進展すると期待される.
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