研究概要 |
わらびの究極発癌物質(1)は、DNAを塩基選択的にアルキル化し切断する機能を有する。本研究では、究極発癌物質(1)に基づき設計・合成した安定な人工類縁物質(2)とDNA塩基配列認識機能を有するネトロプシン誘導体を連結することにより制限酵素機能分子(3,4)を合成し、それらのDNA切断活性を検定した。 ジエン(5)と酸無水物(6)のDiels-Alder反応を鍵反応として共役ケトン(7)を収率良く合成した。共役ケトン(7)について、FAMSOカルバニオンの共役付加と官能基変換を行い、ヒドリンダン骨格1位にカルボキシル基を導入したラクトン(8)を得た。ラクトン(8)に対してネトロプシン誘導体を連結し、制限酵素機能分子(3)を合成した。また、共役ケトン(7)のアルキル化反応により、ヒドリンダン骨格2位に官能基を導入したアセタール(9)を合成した。ジメチルアセタール基を足がかりとしてネトロプシン誘導体を連結し、制限酵素機能分子(4)を合成した。制限酵素機能分子(3,4)は究極発癌物質(1)よりも安定であり、一般的な取り扱いが可能な化合物である[半減期:(3)75分、(4)68分]。 プラスミドDNAを用いた切断実験を行った結果、制限酵素機能分子(3,4)のDNA切断活性はそれぞれ、DNA塩基配列認識部位を持たない対照化合物に対して約4倍強いことが明らかになった。
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