研究概要 |
1.研究の目的:質量分析法を用いて糖鎖とタンパク質との特異的相互作用を解明すること. われわれはこれを(1)タンパク質と相互作用をする糖鎖(リガンドあるいは受容体)の構造解析,(2)特異的非共有結合によるコンプレクスの検出,(3)糖包接錯体の三項目に大別して研究を進めている. (1):本年度著しい進展をなし得たのは本課題である.すなわち従来のイオン化法では質量分析が困難であったポリシアロガングリオシド類について,30μmol程度の試料を用いてESIMS CID-MS/MSをおこない,構造異性体の区別ができることを示した.さらにセレクチンのリガンドとして注目されているポリスルフォおよびシアロ型ルイス系複合糖質について,Le^xとLe^aを区別する方法を見いだし,これまでNMRで解析していた結合位置異性を質量分析法によれば更に微量で見分け得る可能性を示した.またコンドロイチン硫酸,デルマタン硫酸およびヘパリン・ヘパラン硫酸系糖質についてFABMS CID-MS/MSにより硫酸基の結合位置を決める方法を確立した. (2):糖鎖とタンパク質との非共有結合コンプレクスについてはコレラトキシンB-サブユニットとGMlaを例としてESIMS法で検出できているが、特異的結合であることの証明は継続課題とする.この課題についてはレクチンと特異的に相互作用する糖鎖とのコンプレクスも研究対象としているが、レクチン自体および糖質自体のESIMS測定は容易であるが,コンプレクスのESI測定は現在のところ,凝集作用が測定に対する最大の難関となっている. (3):糖包接錯体の研究についてはゲストの光学異性の検討を含めて来年度の継続課題とする. 2.新課題:ESI CID-MS/MS法を用いて酸性Le系糖鎖におけるCa^<2+>の結合位置を特定する方法をも併せて研究中である.
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