研究概要 |
時間分解ESR法・パルスESR法の高時間分解能と時間ドメイン測定の利点を生かして2つの研究を行った。 1.希土類架橋二量体の励起状態におけるユニット間相互作用 我々が開発した三重項のESRパラメーターを用いた二量体の分子間相互作用の解析法を用いて希土類金属(La,Y)架橋ポルフィリンダイマーの励起三重項(T_1)の性質を調べた。その結果以下の事実が明らかになった。 (1)T_1における面間相互作用は面間距離4A以下で有効になり、3A以下で著しく大きい。 (2)希土類架橋子は他のクラウンエーテル、芳香環架橋子などに比べて大きな相互作用を与える。 (3)ポルフィリンのT_1の性質、a_<1u>-e_gかa_<2u>-e_gか、によっても相互作用の大きさが異なり、前者の方がより大きな相互作用を与える。 (4)相互作用の大きさとT_1の寿命との相関があり、相互作用が大きいほど短寿命である。 2.金属フラーレンの動的構造 フラーレンは現在、最も活発に研究されている分子の一つであるが、我々は、Lu@C_<82>,Y@C_<82>などの希土類金属内包フラーレンのスピンダイナミクスの研究を行った。パルスESRにより、スピン格子緩和およびスピン-スピン緩和時間の温度依存性を調べた。その結果、160K-280Kでは2つの分子運動の関与が示され、緩和のシミュレーションからそれぞれ、分子全体の運動と擬ヤーンテラー状態間のポッピング又は内包金属の運動と同定された。
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