研究概要 |
1.希土類(RE)-クラウンエーテル錯体の抽出性の高い系を見いだすために,クラウンエーテルとして18-クラウン-6(18C6)を,酸性抽出剤(対陰イオン)としてペンタデカフルオロオクタン酸(Hpdfo)と二座配位子のヘキサフルオロアセチルアセトン(Hhfa)を用い,種々の溶媒へのLa,Gd,Luの抽出平衡を調べた。Hpdfo-ベンゼン系での抽出錯体はいずれもRE(pdfo)_3(18C6)であり,その抽出性はLa≫Gd≧Luとなり期待したように18C6のサイズ選択性がみられた.Hhfa-ベンゼン系では抽出錯体はpdfo系同様RE(hfa)_3(18C6)であったが,3元素の抽出性の差はほとんどなかった.一方,Hhfa系においてより極性の高い溶媒を用いるとLaがLa(hfa)_2(18C6)^+として選択的に抽出されるようになり,ニトロベンゼンでは抽出性はLa≫Gd>Luとなることが分かった. 2.RE-18C6錯体の水和や構造を調べるために,まず,REとしてLaとEu,酸性抽出剤としてトリクロロ酢酸(Htca)を用い,抽出平衡のほか伝導率測定,レーザー誘起蛍光スペクトル分析を行った.1,2-ジクロロエタン(DCE)への抽出錯体はpdfo同様RE(tca)_3(18C6)であり,Laの高い抽出選択性がみられた.La錯体を含むDCE溶液の伝導率はきわめて低く,3分子のtcaは解離せずにLaに結合しているものと考えられる. DCEに抽出されたEu(tca)_3(18C6)のレーザー誘起蛍光スペクトル並びに蛍光寿命を測定し,錯体中のEu^<3+>の内配位圏の水和について研究した.励起スペクトルには578.4nmと579.1nmに二つの極大がみられ,それぞれのピークでの蛍光寿命測定から25℃では1水和錯体と2水和錯体が共存していることが分かった. 3.今後,18C6の空孔により適合する軽希土(特にLa)を用いて,tca,pdfo並びにhfa系の錯体の水和数を決定するとともに,NMRにより錯体の構造に関して研究する予定である.
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