研究概要 |
本研究の目的は、希土類錯体を触媒に用いて不斉アルドール反応や不斉Michael付加反応の立体化学を検討し、希土類錯体触媒による特異な立体化学制御を達成することにある。本年度は、NMRシフト剤として用いられているユーロピウム(III)錯体Eu(fod)_3を触媒に用いて、キラルなγ-シロキンα,β-シクロペンテノンを酢酸エステル由来のケテンシリルアセタールとのMichael反応の立体化学制御に取り組んだ。その結果、このEu触媒反応では、立体的に不利なsyn体が優先的に生成するという興味ある結果を見いだした。ここで見られたsyn選択性は、TASF(F^<◯->源)触媒反応で見られたanti選択性(立体的に有利)とは逆である。そこで、この“異常な"syn選択性の理由を解明するために、種々のルイス酸触媒や種々のケテンシリルアセタールを用いて、上記のα,β-エノンのMichael反応の立体化学を詳細に検討したところ、かさ高いケテンシリルアセタールとの反応では、anti選択性が見られること、またこのsyn選択性はEu触媒特有の現象ではなく、ルイス酸触媒下で見られる一般的現象であることを見いだした。さらに上記のα,β-エノンの代わりに(γ-シロキシメチル)シクロペンテノンを用いて酢酸エチル由来のケテンシリルアセタールとのEu触媒反応を行ったところ、syn選択性は消滅してanti選択性が見られることを見いだした。以上の結果から、本研究で見られた“異常な"syn選択性は、反応の遷移状態におけるγ-シロキシ基の立体電子効果によるものであることを明らかにした。
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