研究概要 |
1)遷移金属硫化物、酸化物の合成 後期遷移金属であるNi、Pd、Rhのチオラト錯体の検討を行ない、これらが熱的なC-S結合開裂をおこしやすいことを見いだした。さらに亜鉛、カドミウムのチオラト錯体,[Zn(SR)_2]、[Cd(SR)_2]を合成した。得られたメチルチオラト錯体の反応ではMeSMeを定量的に発生しつつ、亜鉛、カドミウムの硫化物を与えることが元素分析、X線回折から明らかになった。熱重量分析によっても、チオエーテルの脱離に相当する重量減少が見られ、各温度での分析結果から反応速度を求めた。この結果から、合成法と熱分解挙動の関連について明らかにした。なお、反応の活性化エネルギーは(II)法の亜鉛で143kJmol^<-1>,カドミウム191kJmol^<-1>で、チオラト配位子の炭素-硫黄結合開裂反応は熱にのみよっておこるのではなく、中心金属が遷移状態で関与している。反応を酸素共存下で行なうと、金属酸化物が生成する。 2)前駆体としての希土類金属錯体の合成 上記の金属錯体を合成する目的で各種の希土類金属化合物を原料としてチオラト配位子のみを含むいわゆるHomolepticなチオラト錯体の合成を試みた。用いた希土類金属化合物は塩化ランタン、酢酸ランタン(水和物)、酢酸セリウム(水和物)、アセチルアセトナトサマリウム(水和物)であり、これをNaSMe,LiSEt,NaSPhと反応させた。生成物の元素分析より塩素、赤外吸収スペクトルでアセタト配位子等の残存が認められた。 3)硫化亜鉛への希土類のド-ピング 上の硫化亜鉛の合成反応を希土類イオン共存下で行なうことによって、希土類金属イオンをドープした硫化亜鉛の合成が期待できる。3モル%の塩化ユーロピウムを含む塩化亜鉛に量論量のメタンチオラトナトリウムを水溶液中で反応させユーロピウムイオンを含むチオラト亜鉛錯体を得た。
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