研究概要 |
本研究は細胞内情報伝達反応として,また種子発芽エネルギー産出反応としての脱リン酸化反応(ホスホモノエステラーゼ活性)に焦点を絞り,生体内で活躍しているリン酸化アミノ酸およびフィチン酸(myo-イノシトール六リン酸)の脱リン酸化反応を希土類を使って試み,希土類による生体機能調節の可能性を検討した.ホスホモノエステラーゼ活性についてCe^<4+>:L=1:1系ではホスホセリンはほぼ,ホスホチロシンは1/3が反応し,フィチン酸はほとんど反応しないといった大きな構造依存性が見出された.反応活性種はP-31NMRでは検出されず,H-1NMRではマルチ種として見えることからCe^<4+>がリン酸まわりに何種類もの結合を形成していることが推定された.Ca^<2+>,Mg^<2+>,K^+,Na^+系では反応は認められず,リン酸エステルの加水分解がCe^<4+>に特有であることを示した。また,希土類と似た化学的性質を有するCa^<2+>,Mg^<2+>との比較から希土類の相互作用の特性を明らかにした.フィチン酸についてまずCa^<2+>,Mg^<2+>との錯形成,錯体構造を明らかにした.算出された安定度定数から,M:L=1:1錯体種についてはホスホチロシン,ホスホセリンの場合はCa^<2+><Mg^<2+>,フィチン酸はCa^<2+>>Mg^<2+>とイオン半径が小さい方が安定度定数が大きい通常のリン酸-金属イオン結合を示したのに対し,リン酸ブリッジを形成するM:L=2:1および3:1複核錯体種はCa^<2+>>Mg^<2+>とイオン半径の大きな金属ほど複核錯体を作りやすいことが判明した。フィチン酸錯体の安定なコンフォメーションはP-31NMRは,Ce^<3+>>Ce^<4+>>Ca^<2+>>MG^<2+>>H^+の順に5axleqをとりやすく,イオン半径の大きな金属ほど5axleqのコンフォメーションをとりやすいことが明らかとなった。Ce^<3+>,Ce^<4+>のCa^<2+>,Mg^<2+>,Na^+,K^+には見られないリン酸ブリッジへの希土類イオンの強い配位特性が明らかになった。
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