研究概要 |
本年度は希土類イオンと核酸の相互作用を研究する前段階として,RNA/DNAハイブリッド構造の安定性を,通常のカチオン存在下で予測できる手法の開発を試みた。まず,構造安定性の予測モデルとして最近接塩基対モデル(nearest‐neighbor model)を提案し,このモデルから予測されるRNA/DNAハイブリッドの融解挙動と実験結果を比較することによって,このモデルの妥当性を検討した。その結果,同一の最近接塩基対の組み合わせからなるr(CACGGCUC)/d(GAGCCGTG)とr(CUCACGGC)/d(GCCGTGAG)の融解挙動は,同じ濃度においては同一であり,融解温度も各々44.3℃,45.4℃と実験誤差範囲内で一致した。これに対して,配列は似ているが異なる最近接塩基対からなるr(AAGCGUAG)/d(CTACGCTT)とd(AAGCGTAG)/r(CUACGCUU)は融解挙動が大きく異なることが示された。これらの結果から,RNA/DNAハイブリッドの安定性を求めるのに最近接塩基対モデルを適用することは妥当であると考えられる。この結論は,同一の最近接塩基対の組み合わせからなっている他のハイブリッドでの結果や熱力学的諸量,円二色性(CD)測定およびゲル電気泳動の結果からも支持された。今後は,最近接塩基対パラメータ及び構造と反応に寄与する希土類イオンと他のイオンの協同効果を考察する予定である。
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