研究概要 |
平成6年度では,シクロオクタテトラエンと7-オキサノルボルナジエン体との高圧反応で主生成物として得たトリシクロ[4.2.0.0^<2,5>]オクタン誘導体(1)が,X線照射下で1,5-シクロオクタジエン体(2)に変化する新たな結晶相反応について,製造変化する前の構造を明らかにすることを目的の一つにした。通常のX線構造解析装置ではトリシクロオクタン構造を観測することが困難だったので,東工大の大橋研究所で開発された迅速X線構造解析装置を用いて構造解析した。その結果,トリシクロオクタン構造が観測でき,X線照射によって,1の中央の四員環が単結晶状態を保ったまま開裂することが初めて証明できた。1を固相で加熱しても,中央の四員環が開裂することと,低温でX線照射することで,環開裂が抑えられることから,X線照射下でも,熱的に環開裂している事が強く示唆された。1は2分子で空孔を作り,その中に3分子の再結溶媒に用いたシクロヘキサンを包接している。この包接溶媒の効果を調べるために,溶媒を包接していない単結晶を製作中である。また,結晶相反応する類似のトリシクロオクタン骨格を持つ化合物を合成している。 以上,本年度では,懸案であったトリシクロオクタン体の結晶構造を明らかにできた。
|