研究概要 |
本補助金によって低温恒温槽(クライオスタット)を購入し、BEDT-FFT化合物のκ-(BEDT-TTF)_2Cu(NCS)_2,α-(BEDT-TTF)_2KHg(NCS)_4および擬1次元性ハロゲン架橋金属錯体;[MA_2][MA_2X_2]Y_2(M=Pt,Pd,Ni,A=en,chxn,X=I,Br,Cl,Y=ClO_4,BF_4,I,Br,Cl)について、室温以下の各温度において、中性子錯乱強度測定を行った。また擬1次元性ハロゲン架橋金属錯体について低温粉末x線回折測定と単結晶x線構造解析も併せて行った。試料として用いたBEDT-TTF化合物結晶は金研の豊田直樹氏(当時)と佐々木孝彦氏から提供されたものであり、擬1次元性ハロゲン架橋金属錯体結晶は各大情報文化学部の山下正広氏と金研の黒田規敬氏から提供されたものである。中性子錯乱実験には高エネルギー物理学研究所の熱中性子分光器LAM-D、同じく冷中性子分光器LAM-40および原研の改造3号炉の冷中性子分光器AGNESを用いた。粉末x線回折測定と単結晶x線回折測定には本学科のRIGAKU-RAD-CとRIGAKU-AFC5をそれぞれ用いた。 測定の結果、κ-(BEDT-TTF)_2Cu(NCS)_2の超伝導転移温度Tc=9.6K)近傍以下で2,4および8meVのエネルギー固有値をもった振動モードが劇的な安定化を見せることが分かった。また、同じ温度領域で、2meV以下のエネルギー領域でも半値幅の広い非弾性散乱強度が現れた。α-(BEDT-TTF)_2KHg(NCS)_4においてはネ-ル温度(Tc=50K)以下でエネルギー固有値0.4,0.6および0.8meVのモードが安定化することを見いだした。 擬1次元性ハロゲン架橋金属錯体についても詳細な研究を行っている。
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